いつかのはなし

観劇日記

舞台「BIRTHDAY」を観て

 

自分は大勢の中からたった1人選ばれた命なんだ、それだけで意味があることなんだ、と気付けた。たくさんの想いを背負って生きているということを自覚した。同時にその想いの重さを感じてしんどくなった。肯定も否定も全部ひっくるめて、愛なんだろうなあ、愛って重いなあと、BIRTHDAYのことをぼんやり思い返している。

どんなに自分を卑下しても、周りがそんなことないよと否定してくれる。あなたはそのままで生きていけばいいんだよと肯定してくれる。そんな優しい人たちが周りにいることはそれだけでとても幸福なことだけれど、最後に自分を肯定してあげなきゃいけないのは自分自身であって、許せない、嫌いな自分を受け入れて、自分の力で一歩足を踏み出さなきゃいけない。これって私にとってはすごく難しいことで、これができる人は強い人だな、と思う。

存在感が薄く、いつも誰かにくっついて、じっとその場にいたイチ。私も集団を先導するようなタイプではなく、集団の中で積極的に発言することが苦手で、秀でたところはないと感じている人間なので、彼に感情移入してしまうことが多かった。

でも、おどおどしながらも、たまに勇気を出して発言するイチの言葉はとても真っ直ぐで、彼は最初からずっと、しっかりと自分を持っていた。(これは、なんとなく宮河さん自身にも感じているところでもある)

残り3人になった時、残り2人になった時、最後の1人になった時。想いを託された分だけ、イチの存在感はどんどん鮮やかになっていく。BIRTHDAYは宮河さんの役者人生の始まりを祝福する物語でもあった。 宮河さんと、この作品で演出家としての始まりを迎えた平野さん。おふたりがこの先どのような役者、演出家になっていくのかとても楽しみになった作品でした。